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#023:馬産地は、なぜ日高なのか? [後編]

前編では、わが国で生まれたサラブレッドの約98%が北海道産、このうち約80.7%が日高で生産されることをお話ししました。

北海道の中での、最大の馬産地は日高なのです。
日高は、襟裳岬から北西方向に位置する地域で、ここには多くの牧場が存在します。

それはなぜなのでしょうか?

日高は太平洋側に面しているため、濃霧が発生しやすい地域です。
もっとも大きな理由は、沖合いを流れる寒流の千島海流(親潮)の影響です。

寒流は周辺の海域よりも水温が低いことから、その名を持ちます。
決して、「○○℃より低いから」といった絶対的な水温によって分類するものではありません。
周辺海域との比較の問題です。

さらに寒流とは「低緯度地方に向かって流れる海域」のことです。
オホーツク海から南下する(寒い高緯度側から低緯度に向かって流れてくる)ため、基本的に水温の低い海域です。

夏季になると、日本列島の南側に太平洋高気圧が張り出します。
風は、高気圧から低気圧に向かって流れる空気のことですので、この太平洋高気圧から空気が吹き出します。

地球の自転の影響から、吹き出された空気は時計回り(南半球は反時計回り)となります。

この風が暖流である日本海流(黒潮)の上空を通過する際に温められ、暖かく湿った空気となります。
しかし、北緯40度以北までくると、今度は千島海流の上空を通過するため、次第に冷やされていきます。

飽和水蒸気量(1立方メートル中に含むことのできる水分量)は、気温が高ければ多く、逆に気温が低ければ少なくなります。
よって、千島海流の上空で冷やされた大気は飽和水蒸気量を減じて、行き場を失った水分が霧となって発生します。

釧路が「霧の街」として知られているのは、このためです。
釧路ほどではないにせよ、日高もまた霧がよく発生する地域です。

霧は太陽の直射日光を和らげてくれます。
そのため、高温が苦手なサラブレッドにとって快適な環境を作り出してくれるのです。

また比較的降水量が少ないため、牧草を育てやすいことも見逃せません。
あまりにも多雨であれば、森林地帯となりますからね。

この辺は、ニュージーランドで発達する酪農と同じ理屈です。

さらに、豪雪をもたらす北西モンスーンの風下側に位置することから、冬季の降雪量が比較的少ないため、サラブレッドの育成に都合が良いことなどもあります。
これは太平洋側に位置しているからこそですね。

もちろん、日高が平坦な地形が多いことも忘れてはいけません。

それぞれの地域において固有の自然環境があり、そこに最適な形で文化が形成されます
日高のサラブレッドの生産もまた、その一つだったのです。

それにしても、北海道大学は面白い入試問題を作成しますね。
北海道の大学ならではの問題かもしれませんが、北海道在住ではない受験生には少し難易度の高い問題だったかもしれません。

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